2023年のプロ野球シーズンもおよそ2/3が消化。
開幕時に期待されていたプロスペクト選手(ブレイク候補)は、既に一軍の戦力となっていたり、思いのほか伸び悩んでいる、という選手も見受けられます。
そこで2023年のファーム(二軍)成績をもとに、日本プロ野球のプロスペクトランキングを再考してみました。
尚、各選手の成績は、2023年8月15日時点を元に作成。
成績はDelta社より引用しております。
そもそも野球(日本プロ野球・NPB)におけるプロスペクト・トッププロスペクトとは?
将来有望な若手選手のこと。MLB(メジャーリーグ)では公式がランキングを公開!
メジャーリーグでは一般的に使われる単語である、プロスペクト。
近年は日本プロ野球界でも使われるようになりました。
プロスペクト選手とは、将来有望な若手選手のこと。
各球団で最も期待されている有望な選手のことを、トッププロスペクト選手と呼びます。
メジャーリーグには選手のロースター枠(MLB公式戦に出場可能な選手の枠)というものがあります。
日本では考えられませんが、メジャーリーグではこのロースター枠内の主力選手と、マイナーリーグの若手選手とのトレードが頻繁に行われます。
そのため、1チーム最大180人いるマイナーリーガーの能力を簡単に判別するため、プロスペクトランキングというものが考え方が定着しています。
メジャーリーグでのプロスペクトランキングは、いかにWAR(Win Above Replacement:選手の総合能力から試算した勝利貢献度)を軸に、投手と野手混合のランキングが作成されます。
今回は見やすくするために、あえて投手と野手のランキングを分けて、私的な観点で作成してみました。
プロスペクトランキングの対象となる選手の条件、定義は?
MLB公式では「新人王資格」「25歳未満」「海外プロ野球経験がない」選手
メジャーリーグのプロスペクトランキングは、MLB公式サイトやBaseball americaなど、多数のサイトでランク付けされています。
それぞれのサイトで定義は微妙に異なりますが、今回はMLB公式サイトにならって、以下の条件の選手にて日本プロ野球のプロスペクトランキングを作成してみました。
- 新人王資格がある(支配下登録されてから5年以内、投手は前年までの一軍での登板イニング数が30イニング以内、打者は、前年までの一軍での打席数が60打席以内)
- 25歳未満
- 海外プロ野球経験がない
今回のプロスペクトランキングは、2023年8月15日時点で来期新人王資格がある選手のみを対象としています。
2023年夏NPB(プロ野球)トッププロスペクトランキング投手編
1位(NPBトッププロスペクト):オリックスバッファローズ 曽谷龍平(23歳)左投手(先発タイプ)2022年ドラフト1位 白鴎大学卒
即戦力の期待が高く入団した曽谷。
豊富な先発投手陣に食い込めずにいるが、ファームでの成績は抜群。
K%は24.5%、BB%は5.2%、被打率は.235と十分に一軍で通用しそうな成績を残している。
- 長所:高い三振奪取力と平均球速148km/hの直球
- 課題:初球でストライクをとれずボール先行になる傾向
2位:千葉ロッテマリーンズ 菊地吏玖(23歳)右投手(先発タイプ)2022年ドラフト1位 専修大学卒
こちらも22年ドラフト1位の菊地。
曽谷と比べて球威は劣るものの、ファームでBB%=3.2%という圧巻のコントロールを誇る。
- 長所:低いBB%から表されるコントロールの良さ
- 課題:対右打者の高い被打率と平均球速の向上
3位:阪神タイガース 岡留英貴(24歳)右投手(リリーフタイプ)2021年ドラフト5位 亜細亜大学卒
3位は右のサイドハンド右腕の岡留投手。
1年目からファームで通用していたものの、今季は更に成績が向上。
K%は22.1%から33.6%、BB%は6.1%から5.3%となっている。
セットアッパーとして期待したい存在。
- 長所:昨年から4キロ高速化した平均147km/hのストレートと高い三振奪取力
- 課題:今季唯一ホームランを打たれている左打者対策
4位:中日ドラゴンズ 仲地礼亜(23歳)右投手(先発タイプ)2022年ドラフト1位 沖縄大学卒
こちらも22年ドラフト1位の投手。
曽谷や菊地と異なり、ファームでの成績がずば抜けているわけではないものの、一軍での好投もあったためこの順位とした。
- 長所:高い三振奪取力と100球を投げられるスタミナ
- 課題:コントロールの甘さによるイニング数を超える被安打数と高い被打率
5位:横浜DeNAベイスターズ 深沢凰介(20歳)右投手(先発タイプ)2021年ドラフト5位 専修大学松戸高校卒
初めて下位指名の高卒選手がランクイン。
阪神の森木やDeNAの小園の成績がいまいちな中、好投を続ける高卒二年目サイドハンド右腕。
多彩な球種を操り打たせてとるピッチングが持ち味で、BB%=4.2%と一軍経験豊富な大貫晋一投手と同じ数値を誇る。
※ファームのBB%1位は阪神の秋山拓巳投手で2.1%とさすがの数値
- 長所:低いBB%から表されるコントロールの良さ
- 課題:K%と平均139km/hのストレートの平均球速向上
2023年夏NPB(プロ野球)トッププロスペクトランキング野手編
1位(NPBトッププロスペクト):読売ジャイアンツ 浅野翔吾(19歳)外野手(右投右打)2022年ドラフト1位 高松商業高校卒
誰もが名を知る22年夏の甲子園の主役。
身体が小さく独特なフォームのため、プロ野球で通用するか疑問視する声もあったが、その成績はまさにドラフト1位と言えるもの。
5月までは2割前半だったものの、その後は3割前後の打率を残している適用具合も成長を感じる。
課題は特にないものの、強いて言えばもうすこし長打がほしいか。
- 長所:高いhard%と広角に打てる打撃力
- 短所:わずかにUZRマイナスの守備力と打撃と長打力
2位:横浜DeNAベイスターズ 松尾汐恩(19歳)捕手(右投右打) 2022年ドラフト1位 大阪桐蔭高校卒
こちらも22年高卒ドラ1のプロスペクト。
浅野と同様に将来球界を背負う選手となることが期待されるが、打撃の傾向はまるで異なる。
強い打球を打てることが特徴の浅野に対し、松尾の特徴は三振の少なさ。
K%=8.5%と当てることがうまいことで有名な楽天の銀次とほぼ同様の数値。
※ 23年度ファーム成績比較
浅野と松尾がどのような打者となっていくか、将来が楽しみである。
- 長所:三振の少なさを特筆とした全体的な打撃成績
- 課題:ファーム最多の捕逸数を記録している守備面
3位:東京ヤクルトスワローズ 澤井廉(23歳)外野手(左投左打)2022年ドラフト3位 中京大学卒
大卒ルーキーの長距離砲。
地方大学リーグながら、大学日本代表候補に選ばれた実力を一年目から遺憾なく発揮。
このままのペースで打ち続けると、同じ大卒スラッガーである西武山川の一年目成績(21本塁打)を超す勢い。
打った後のバット投げもめちゃめちゃかっこいい。
- 長所:ファームダントツトップの17本塁打を誇る長打力
- 課題:ライトでもレフトでもUZRがマイナス指標の守備力
4位:東京ヤクルトスワローズ 北村恵吾(23歳)三塁手(右投右打)2022年ドラフト5位 中央大学卒
これまたヤクルトから出てきた、大卒長距離砲。
北村が澤井と異なる特徴は、コンタクト力の高さ。
打率は.246とそれほど高くないものの、whiff%(空振り率)=16%とおよそDeNAの松尾と同じ数値。
(浅野も16.4%と高数値。やはりトッププロスペクト)
ヤクルトの野手育成メソッドは本当に素晴らしい。
- 長所:2桁本塁打を記録している長打力と意外に低いwhiff%(空振り率)
- 短所:二桁失策(エラー)を記録しているサード守備
5位:阪神タイガース 井坪陽生(20歳)外野手(右投右打)2022年ドラフト3位 関東第一高校卒
高校時代から走攻守の三拍子に加え、3年夏の都大会では三振が一度もなかったという井坪。
そのコンタクト力を武器に、一年目からファームで好成績を記録。
打率.278は同級生の浅野や松尾より好成績を残している。
- 長所:センターを中心に打ち返せる打撃力
- 課題:センターでもレフトでもUZRがマイナス指標の守備力